健康保険の給付
健康保険では、被保険者とその家族(被扶養者)が仕事以外のことで病気にかかったり、けがをしたり、出産をした場合および死亡した場合に、医師の診療を提供したり、定められた各種の給付金を現金で支給します。
この場合の、診療を提供したり給付金を支給することを保険給付といいます。
年齢別の給付割合
病気やけがに対する保険給付の割合は年齢により異なります。
義務教育就学前 | 8割 |
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義務教育就学後~69歳 | 7割 |
70歳~74歳 | 所得により8割または7割 |
75歳以上 | 所得により9割、8割、7割 |
現物給付と現金給付
保険給付を行う方法には、病気やけがをした場合に、これを治すために医療そのものを給付する方法と、治療にかかった費用を給付する方法との二つの方法があります。医療を給付する方法を現物給付、現金を給付する方法を現金給付と呼びます。
法定給付
健康保険法で決められている給付が法定給付で、全国健康保険協会でも健康保険組合でも共通して支給されるものです。
自殺(自殺未遂を含む)による給付制限
被保険者およびご家族が自殺(自殺未遂)でけが等をした場合、精神病等の傷病であれば「故意」にあたらず健康保険が給付されると認識されることがありますが、必ずしも健康保険が給付されるわけではありません。
昭和2年11月12日保理第3号社会局保険部長通知では、「行為(結果を含む)に対する認識能力なき者については「故意」の問題を生ぜず」とされており、精神病等であっても「このような行為をすれば、こういった結果になりうる」という認識がある場合は、故意と認められます。
例えば、縊首(首吊り) やリストカット等、行為にいたるまでの準備が必要である場合は、行為や結果について認識能力を欠いているとは認められません。
精神病等による朦朧や徘徊により、不意に崖から転落し負傷した場合などは、認識能力がないと認められる場合があります。
もっと詳しく
- 健康保険でかかれないとき開く
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- 仕事や日常生活にさしさわりのないソバカス、アザ、ニキビ、ホクロ、わきがなど
- 回復の見込みがない近視、遠視、乱視、斜視、色盲など
- 美容のための整形手術
- 健康診断、生活習慣病検査、人間ドック
- 予防注射、予防内服
- 身体の機能にさしさわりのない先天性疾患
- 正常な妊娠・出産
- 経済的理由による人工妊娠中絶
- 給付が制限されるとき開く
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次のようなときには、健康保険制度の健全な運営を阻害することになりますから、給付が受けられなかったり、一部を制限されることがあります。
- 故意に事故をおこしたとき
- けんか、よっぱらいなどで事故をおこしたとき
- 正当な理由もないのに医師の指示に従わなかったとき
- サギ、その他不正に保険給付を受けたり、受けようとしたとき
- 健康保険組合が指示する質問や診断などを拒んだとき
なお、罰則的なものとは別に、保険給付を行うことが事実上不可能だったり、他の法令が優先するなどの理由により給付が制限されることもあります。次のような場合です。
- 少年院に入院させられたとか、監獄に拘禁されたとき
- 感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律など他の法令により、国または地方公共団体の負担で療養費の支給や療養が行われたとき
- 給付を受ける権利は2年開く
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健康保険の給付を受ける権利は、2年で時効となります。現物給付については、時効は問題となりません。現金給付についてだけ問題となります。たとえば、出産育児一時金について請求するのを忘れていると、2年たったときに時効となり、権利がなくなってしまいます。
健康保険の給付を受ける権利は、他人にゆずったり、担保にしたり、差し押さえたりすることはできません。